星野源

 星野源と同じタイミングで入院した。星野源くも膜下出血の予後経過を見た上での治療みたいだった。病室はきれいなマクドナルドといった風で、きれいなんだけど雑多。知性のない感じにベッドが並んでいる。

 ちょうど1週間前に「地獄でなぜ悪い」を観ていたこともあって、その話をする。確か同い年か俺がほんのちょっと先に生まれてんだよなと思って、敬語とタメ口を半々で使う。別にめちゃくちゃ好きというわけでもなかったし、いまでもそこまで好きってわけじゃないんだけど、「地獄でなぜ悪い、すごくよかったですよ。星野源やるなーって。めちゃくちゃ見直したもん。って上からだけど(笑)」「曲もよかった。正直星野源って名前は知ってたけどあんま聴いたことなくて、でもめっちゃいい曲だなあと思って。ってこれも上からだけど(笑)で、早速iTunesで買おうとしたら、売ってないんですよね、カクバリズムって」と、知っている数少ない知識などを織り交ぜながら、かなり媚びた。

 手術後星野源は3日間くらいほとんど眠っていた。麻酔が効いて起きられないとかそういうのじゃなくて、自分から率先して眠っているようで、お医者さんが「すさまじい生命力と、睡眠欲がある。ここまでの患者はこれまで見たことがない」と評していた。

 5日目くらいにマックの雑なテーブルみたいなところで、入院中書き続けていたらしいノートになにか書いている星野源と会う。表紙には自分で描いたコーヒーの絵と、「Coffee & ⚫︎⚫︎」みたいな文字が書いてあった。「せっかくだから入院したことも記録しとこうと思って」と言っていた。表紙にはカップ型のコーヒーのシミ。それを見て、ああ、こういうところがいいんだなあと思った。